買取日記
BLOG「見る」「使う」だけでなく「知って」楽しむ洋食器入門本『あたらしい洋食器の教科書』
『初心者のための洋食器講座』シリーズをはじめ、数多くの陶磁史講座を開催されているカリーニョ代表の加納亜美子さんがお姉さんと共著で本を出すっていうから早速ポチりました。
あたらしい洋食器の教科書 美術様式と世界史から楽しくわかる陶磁器の世界
洋食器は「見る」「使う」だけでなく「知る」ことも楽しんでほしいとい観点から、従来までのカタログ的な書籍や専門書とは違った、洋食器の入門書として作られた1冊です。
全5章のうち序盤(1〜2章)は、洋食器の種類や製造方法、部位名称、シェイプやパターンなどの基礎知識からはじまり、世界の洋食器ブランドの紹介とまさにやさしい入門書的な内容になっています。
本番は3章から。サブタイトルに「美術様式と世界史から楽しくわかる陶磁器の世界」とあるように、さまざまな美術様式とその背景となった歴史的な出来事、キーパーソンについて紐解いていきます。
全ページフルカラー、とにかく美しい写真やイラスト
本書は287ページ全てフルカラー。登場する洋食器は全て実写で本物の魅力を感じることができます。ときおりはさまれるテーブルカットやイラストも美しいものばかりで、ペラペラと写真を眺めるだけでも楽しめます。
美術様式を代表する洋食器で覚える
「美術様式」と聞くと難しそうですが、実際それぞれの説明文だけ読んでもなかなか頭に入ってきません(涙)。そこで本書はそれぞれの様式を代表する洋食器を紹介してくれます。それくらいなら覚えれるかも。そして、そのデザインからそれぞれの様式の特徴を思い出せるかも。
自分は「アール・ヌーボー」と「アール・デコ」がよくごちゃごちゃになっていたのですが、あるとき「アール・デコ」と「エンパイアステートビル」の組み合わせだけ覚えて、そこからエンパイアステートビルの特徴として「機能的」「アメリカ」「幾何学模様」を連想することで、アール・デコの特徴を覚えることができるようになりました(アール・ヌーボーはその反対くらいとざっくり理解)。
そんな感じの道しるべになってくれそうです。
全てを俯瞰できる洋食器の歴史年表
それぞれの美術様式を学んだあと、それらがどう影響しあっていったのか、歴史的な意味とか、重要人物とか、それらを理解するにはどうしたらよいのでしょう。
そこで年表の登場です。本書には15世紀〜現代までの洋食器デザインの変遷と世界史の出来事を1つにまとめた年表が掲載されています。
あの有名ブランド食器がこのときに登場したのね(あれよりこれが先か)とか、ヨーロッパであれがあったとき日本は…とか。例えば、19世紀後半にジョポニズムブームが始まったころ、パリ万博でヘレンドはインドの華を発表した同じ年に、日本は大政奉還が成されていた…など。
それまで点だった知識が歴史の流れの中でどういう位置にあるのか一目瞭然です。これは理解が捗ります。
広い洋食器の海を航海するのに必要な羅針盤的な1冊
著者(加納亜美子)さん曰く、「著者の洋食器愛が溢れすぎた結果、相当なボリュームになってしまいました」ってことですが、その言葉とおり写真もテキストもすごい量でとても一読しただけで終われる本ではありません。
これから新しい洋食器を手に入れるたび、この本を片手にその食器の作られた時代や美術様式など調べてみようと思います。まるで広い洋食器の海を航海する羅針盤的な1冊、ボロボロになるまで使いこんでいきたいと思います。